損益分岐点で新規事業の「撤退ライン」を先に決める

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新しい事業を始めるとき、多くの経営者は「どうすれば成功するか」を考えます。もちろんそれは大切です。しかし、同じくらい大切なのが「どうなったらやめるか」を先に決めておくことです。

撤退の基準がないまま始めると、「もう少し続ければ伸びるかもしれない」と赤字を続けてしまい、本業の資金まで圧迫することがあります。この記事では、損益分岐点を使って新規事業の目標と撤退ラインを決める方法を解説します。

この記事でわかること

  • 損益分岐点の考え方と計算方法
  • 新規事業の計画に損益分岐点を使う方法
  • 撤退ラインを決めるときの3つの基準
目次

損益分岐点とは

損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。これを上回れば黒字、下回れば赤字になります。計算には、費用を「変動費」と「固定費」に分けて考えます。

費用の種類意味例
変動費売上に比例して増える費用仕入、材料費、外注費、販売手数料
固定費売上に関係なくかかる費用人件費、家賃、広告費、システム利用料

損益分岐点の計算式

限界利益率 =(売上高 − 変動費)÷ 売上高

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

限界利益率とは、売上のうち、固定費をまかなうために使える割合のことです。この割合が高いほど、少ない売上で黒字になります。

例で考える:新規事業の損益分岐点

ある会社が、新しいサービス事業を始めるとします。計画は次のとおりです。

新しいサービスの立ち上げを喜ぶチームのイラスト
項目金額・割合
1件あたりの販売価格0.5百万円
1件あたりの変動費(外注費など)0.2百万円
限界利益率60%
月の固定費(専任スタッフ・広告費など)3百万円
数値は説明のための例です

この場合、月の損益分岐点売上高は、3百万円 ÷ 60% = 5百万円です。1件0.5百万円なので、月に10件売れれば、ちょうど利益がゼロになります。

つまり、この事業は「月10件」が黒字化の最低ラインです。現実的に何か月後に月10件に届くのか、そこまでにどれだけの赤字を出すのかを事前に見積もることで、事業の見通しがはっきりします。

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撤退ラインを決める3つの基準

分かれ道で地図を持ち、進むか引き返すかを考えている人のイラスト

撤退ラインは、次の3つの基準を組み合わせて決めます。いずれも、事業を始める前に決めて、幹部と共有しておくことが大切です。

基準1:期限

「開始から12か月で、月の販売件数が損益分岐点に届かなければ見直す」のように、期限と数字をセットで決めます。期限がないと、判断が先送りになりがちです。

基準2:投資できる赤字の上限

黒字化までに出る赤字の合計に上限を設けます。たとえば「累計の赤字が20百万円に達したら撤退を検討する」といった形です。上限は、本業の資金繰りに影響しない範囲で決めます。

基準3:途中の目印(KPI)

売上だけでなく、問い合わせ件数や成約率、リピート率など、事業が育っているかを示す途中の数字も見ます。売上がまだ小さくても、これらの数字が順調に伸びていれば、続ける判断の根拠になります。

基準例
期限開始から12か月で月10件に届かなければ見直す
赤字の上限累計の赤字が20百万円に達したら撤退を検討
途中の目印月の問い合わせ30件、成約率30%を6か月目までに達成
数値は説明のための例です

撤退ラインを決めるときの注意点

  • 撤退の基準は、事業を始める前の冷静なときに決めておく
  • 「撤退」だけでなく、「縮小」「価格や販売方法の変更」など中間の選択肢も用意する
  • 撤退は失敗ではなく、会社を守るための判断と位置づけ、社内で共有する

月次で数字を確認する仕組みをつくる

撤退ラインを決めても、数字を確認する仕組みがなければ判断できません。新規事業は本業と分けて、部門別に売上と費用を集計します。毎月の月次決算で、損益分岐点までの距離と、累計の赤字額を確認しましょう。

上限の線を引いたコインの瓶とストップウォッチ、チェックリストのイラスト

部門別に数字を分けることで、「本業の利益で新規事業の赤字が見えなくなる」ことも防げます。

よくある質問

変動費と固定費の分け方が分かりません。

厳密に分ける必要はありません。売上が増えたときに一緒に増える費用を変動費、売上に関係なく毎月かかる費用を固定費とおおまかに分けるだけで、損益分岐点の目安は十分につかめます。迷う費用は、固定費に入れておくと保守的な見積もりになります。

新規事業の固定費に、既存の人件費も含めるべきですか?

既存のスタッフが新規事業を兼務する場合、その時間に応じた人件費を新規事業に配分しておくと、事業の本当の採算が見えます。本業の利益に隠れて、新規事業の赤字が見えなくなることを防げます。

撤退ラインに達したら、必ずやめるべきですか?

撤退ラインは「必ずやめる線」ではなく、「必ず見直す線」と考えるのがおすすめです。途中の目印となる数字が伸びているか、価格や販売方法を変えれば改善できそうかを確認し、続ける・縮小する・やめるのいずれかを判断します。

損益分岐点を下げるには、どうすればよいですか?

固定費を減らすか、限界利益率を上げるかのどちらかです。販売価格を上げる、外注費などの変動費を下げる、固定費の一部を成果に応じた支払いに変える、といった方法があります。新規事業では、立ち上げ期の固定費をできるだけ小さく始めることも有効です。

新規事業の計画は、どのくらいの期間で立てればよいですか?

まずは黒字化までの見通しとして、1年から2年の計画を月ごとに作るのがおすすめです。月ごとの販売件数・売上・費用・累計の赤字を並べておくと、実績と比べやすくなり、撤退ラインの判断にもそのまま使えます。

まとめ

  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
  • 新規事業は、黒字化に必要な件数と、それまでの赤字を事前に見積もる
  • 期限・赤字の上限・途中の目印の3つで撤退ラインを決め、月次で確認する

新規事業の計画づくりや、部門別の数字の管理にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。損益分岐点の試算から、月次で判断できる仕組みづくりまでお手伝いします。

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